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[プレスリリース]フェムト秒レーザー光の高次高調波によって薄膜の微細加工に成功! ― 極端紫外光の回折限界集光が拓く微細加工の最前線 ―
【発表のポイント】
◆近赤外域のフェムト秒レーザー光の高次高調波として極端紫外光を発生させ、その極端紫外光を回折限界にまで集光し、サブマイクロメートルスケールで微細加工を実現。
◆極端紫外域の高次高調波光によって加工が実現されるための照射強度の閾値を、PMMA薄膜および金属ナノ粒子レジスト薄膜について決定。
◆極端紫外域の高次高調波光による加工部位を顕微ラマン分光によって評価し、極端紫外光によるPMMA薄膜の加工に伴い薄膜内の化学結合が切断されることを発見。
【概要】
国立大学法人東京大学(総長:五神 真)大学院理学系研究科化学専攻の山内 薫教授、岩崎純史教授、本山央人助教、大学院工学系研究科附属光量子科学研究センターの坂上和之主幹研究員、同精密工学専攻の三村秀和准教授、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:平野俊夫)量子ビーム科学部門関西光科学研究所の石野雅彦主幹研究員、国立大学法人宇都宮大学(学長:石田朋靖)工学部の東口武史教授、国立研究開発法人産業技術総合研究所(理事長:石村和彦)先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ(兼務:分析計測標準研究部門)黒田隆之助ラボチーム長らの研究グループは、近赤外域のフェムト秒レーザー光の高次高調波(注1)として極端紫外光(注2)を発生させ、その極端紫外光を回折限界にまで集光して試料に照射することによって、サブマイクロメートルスケールでの微細加工を実現しました。
レーザー加工においては加工を如何に微細にできるかが最も大きな課題です。光の波長が短い程、回折限界のサイズが小さくなるため微細加工に適しています。近赤外域のフェムト秒レーザーを希ガスなどの媒質に集光すれば高次高調波として極端紫外域の超短パルス光を発生させることができます。そのため、極端紫外域の高次高調波は微細加工のための有力な光源として注目されてきました。
ところが、極端紫外域光の集光には屈折率を利用する透過型レンズを使うことができないため反射光学素子を用いなければならない上、波長が短いために反射光学素子の面精度を極めて高くしなければ回折限界での集光を達成することが出来ないという問題があり、これまでは、極端紫外域の高次高調波による微細加工は困難であると考えられてきました。
我々はこの問題点を、独自に開発した高い開口数を持つ高精度な回転楕円ミラー(注3)によって克服し、回折限界にまで集光した極端紫外域の高次高調波によって薄膜サンプルの微細加工に成功しました。
具体的には、近赤外域フェムト秒レーザーパルスをアルゴンガスに集光し、極端紫外域(波長約32 nm)の高次高調波を発生させ、回転楕円ミラーによってサブマイクロメートル径に集光し、アクリル樹脂(PMMA)(、注4)薄膜および金属ナノ粒子レジスト薄膜(注5)の加工を行いました。さらに、加工部位を顕微ラマン分光(注6)によって評価し、加工に伴いPMMA薄膜中の化学結合が切断されるという薄膜内の微視的な結晶構造の変化を明らかにしました。
本研究により、極端紫外域の高次高調波光を高精度な反射光学素子を用いて集光すれば、サブマイクロメートル領域の微細加工が可能であることが明らかになりました。この成果は、レーザーによる微細加工の可能性を大きく広げるものであり、今後の微細加工プロセスへの応用が期待されます。
なお、本成果は2020年5月14日(米国時間)に米国科学誌「オプティクス・レター」にて公開されます。
本研究は、文部科学省"光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)"(「次世代アト秒レーザー光源と先端計測技術の開発(研究代表者:東京大学 山内 薫教授(部門長))JPMXS0118068681」、「光量子科学によるものづくり CPS 化拠点(研究代表者:東京大学石川顕一教授(部門長)JPMXS0118067246」、「先端ビームによる微細構造物形成過程解明のためのオペランド計測(研究代表者:京都大学 橋田昌樹准教授)JPMXS0118070187」);国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託事業「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」;日本学術振興会 (JSPS) 科研費特別推進研究 (15H05696);文部科学省最先端研究基盤事業「コヒーレント光科学研究基盤の整備」;科学技術振興機構(JST)「革新的イノベーション創出プログラムCOI STREAM」の助成を受けたものです。
【研究グループ】
山内 薫 東京大学 大学院理学系研究科化学専攻・教授
坂上 和之 東京大学 大学院工学研究科附属光量子科学研究センター・主幹研究員
東口 武史 宇都宮大学 工学部・教授
石野 雅彦 量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学部門関西光科学研究所・主幹研究員
詳細はこちら(PDF)をご覧ください。
【問合せ先】
国立大学法人宇都宮大学工学部
教授 東口 武史(ひがしぐち たけし)
E-mail: higashi※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)