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[プレスリリース]構造の安定性を小さな渦でみる新たな検査法を発見
~折りたたみ構造から生まれる渦の制御および探索の技術基盤を開発~
埼玉医科大学の若山俊隆教授と相澤康平助教、樋口裕大大学院生(当時)、そして宇都宮大学の東口武史教授らは、折りたたみ構造から生まれる渦の制御および探索の技術基盤を開発しました。
自然界には花のつぼみや新芽、昆虫の翅など多様な折りたたみ構造が存在します。同様に、私たちの体内にあるタンパク質も複雑な折りたたみ構造をもち、その折りたたみの欠陥は多くの疾患の原因となっています。私たちの身近にある折り紙でも折り方を間違えれば、ねらったものと異なる構造体ができてしまいます。重ね合わせのズレなどの折りたたみの欠陥はどのように生じてしまうのか、どのような結果を引き起こすのか、まだ詳しくわかっていません。
本研究では、折り紙工学を応用し、分子配向された折り紙シートを用いて回転対称折り紙という立体構造を設計・試作しました。光をプローブとして使用し、この構造のダイナミクスを観察したところ、規則的に織り込まれた分子配向によって大きな偏光の渦の制御に成功しました。大きな渦に対して、折り紙の折り目やつなぎ目に性質の異なる小さな偏光の渦が数多く現れることを発見しました。山折りと谷折りを変更すると、折り紙の立体構造を制御できます。結果として、小さな渦の個数が変化しました。
立体構造を詳しく調べてみると、小さな渦は構造体が不安定になると増加することが明らかになりました。折り目やつなぎ目が設計と異なって欠陥が生まれることに起因しています。小さな渦は、構造体の安定性を評価する新たな手段として応用できることがわかってきました。
生命現象の中では細胞やタンパク質のダイナミクス、特に細胞の中や膜上で、分子の集合や輸送メカニズムに渦が関与しているともいわれています。現在は折り紙モデルを使用していますが、将来的には本技術を生物学的プロセスに応用していくことで、細胞内ダイナミクスの理解や疾患の診断などに役立つ新たな展開が切り拓かれることを期待しています。
この成果は2024年9月17日号のScientific Reports誌(Nature Publishing group)に掲載されました。
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プレスリリース全文
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工学部 基盤工学科
教授 東口 武史
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